安心・安全に配慮したお遍路の旅 四国八十八ヶ所巡拝・紀行文

いつ頃からだろうか、四国八十八ヵ所を巡る旅に魅せられたのは

四国八十八ケ所お遍路の旅

森 信夫 様

具体的な計画を立てるため、2年ほど前から現地ツーリストから情報集めを開始したが、あいにく新型コロナの感染が拡大し、飲食店や多人数が集まる施設は営業時間を短縮し、やむなく閉鎖するところも出てきた。四国でもお遍路さんが少なくなり、参拝の受付を中止する霊場もあったと聞いた。

しかし、今年になって3回目のワクチン接種が進み、まん延等防止措置も全国的に解除されたので、4月に四国八十八ヵ所を巡る旅に出ることにした。この随想・紀行文は4人の同行者がこの旅に期待したこと、実感したこと、これからの生き方に影響を与えそうなことなどを思いつくままに記したものである。筆者らは夫々の執筆内容について事前に調整してないことから、重複や異なった受け止めを記述する場合があるかも知れないが、その点は最初にお断りしておく。

一般に信仰に基づいて聖地を訪れることを「巡礼」というが、四国八十八ヵ所巡りの場合「遍路」といい、巡礼者を親しみ込めて「お遍路さん」と呼ぶ。筆者らは必ずしも篤い信仰心を持ち合わせてないが、宗派を問わずにお参りする人々の願いを成就する信仰の場としての四国八十八ヵ所に魅せられた者たちである。

お遍路さんには四国霊場を巡るのに相応しい巡拝装束がある。徳島空港に到着後直ぐに一番札所の霊山寺門前にあるお店に向かいお遍路の準備を整えた。巡拝に必須の念珠(ねんじゅ)、金剛杖、略式法衣の輪袈裟(わげさ)、納経帳(御朱印帳)に加え、お遍路さんの正装である白衣・すげ笠・山谷袋を用意し、事前に送られてきた納め札と蝋燭 200 本・線香3箱・賽銭入れを持って出発する。

晩春の遍路路は美しい新緑に覆われていたが、遅咲きのしだれ桜や八重桜、そして淡紫色のフジの花も咲いていた。未だに残るコロナ過の影響からかお遍路さんの数も少なく、遠く響きわたる持鈴の音がもの悲しさを醸し出す。般若心経に合わせて打ち鳴らす音木(おんぎ)の甲高い響きと、男性コーラスのようにも聞こえる美しい般若心経の読経が耳に残る。

51 番札所石手寺の拝礼を終えた筆者ら

霊場拝礼には以外にも厳しい心得がある。主なものとして、①金剛杖は弘法大師の分身なので、宿に到着した時は大師の足を洗う気持ちで心を込めて杖の根本を洗う、②橋の下ではお大師様が休んでいるとの謂れから杖をつかない、③参拝後は鐘を撞かない(戻り鐘は金が出るとか死人を送るもので縁起が悪いとされている)、④心より祈り般若心経を唱える、などがある。他にも蝋燭や線香に火をつける時は他人から貰い火してはいけない、山門や仁王門を出入りする時は両手を合わせて一礼する、などがある。これらはお遍路さんの心得としてしっかり根付いている。金剛杖の扱いを例にとれば、すべての宿泊所において遍路一行の到着に合わせ、杖を洗う水の入ったバケツと杖を拭くタオルを正面玄関に用意してくれたのには驚いた。

筆者らは四国八十八ヵ所霊場を巡る交通手段としてロケバスのような 10 人乗りのジャンボタクシーを利用し、高野山への結願お礼参りを含め 12 日間で約 2,000km を走破した。我々の先達は普段はタクシー運転手をしており、旅行会社からお遍路先達の要請があればスポットで出向くとのこと。先達は俄か遍路の筆者らと旅を共にし、参拝方法やマナーを丁寧に教えてくれるので、初心者としては大いに助けられた。

また大きな荷物を背負い金剛杖をつく歩きお遍路さんの姿も時おり目にした。歩いて遍路巡拝するには40 ~ 50 日かかるが、雨の日も風の日も黙々と歩くお遍路さんの姿には頭が下がった。

般若心経を読経する筆者ら

筆者らは四国八十八カ所の霊場を番号通り(順打ちという)拝礼した。各寺では本堂と大師堂の2カ所で読経したが、般若心経等の読経は初めてであり、一生懸命フリガナを追って読むのが精一杯で小さい声しか出なかった。夕食後に一部屋に集まり般若心経の意味、読経する場合の息継ぎ位置などを語り合った。

八十八カ所の半分ほどの霊場を巡ると読経にも慣れ、次第に声が出ていることに気づいた。100回近くも読み上げれば度胸が付くもので、先達として皆をリードする役も何度か経験した。自宅に仏壇がある場合や法事に臨む場合など、輪袈裟を付けて般若心経を唱えれば有難たがられるのでは、など話しが盛り上がった。

四国八十八カ所お遍路路を旅して、地元の人はお遍路さんをとても大切にしていることに気づいた。道々でお会いすると「ようお参りなさってくれました」と一声かけてくる。こちらも「お世話になります」と軽い会釈で返す。お遍路路には 1,000 年以上ものやさしい時間が今も絶えることなく、ゆっくりと流れている。自分はこのように俗塵を離れた心安らぐ旅を求めていたことに気づいた。

お大師様との同行二人旅をお終えるにあたり、常に楽しい話題の提供と温かい心配りを頂いた渡邉力氏、高橋弘允氏、八巻剛正氏並びに先達の児玉氏に対し、心より感謝申し上げる。

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