船本 いつもお客様をご案内しているタクシー運転手のなかでもベテランのおふたりにお越しいただきましたが、おふたりは四国遍路のご案内役になってどれくらいになるんでしたっけ?
徳野 タクシーの運転手歴は20数年で、お遍路されるお客様をご案内するようになって、17.18年になります。
新田 私も同じくらいの期間、ご案内しています。ただ、回れば回るほど学ぶことが多く、お遍路というものの奥深さを感じますので、まだまだ勉強しなければと思っています。
徳野 確かに何年回っても覚えることばかりですね。
船本 私はフロントでお客様をご案内していますが、実際にお客様と一緒に回るのは、タクシー運転手ですからね。おふたりをはじめ、運転手さんがしっかりとご案内してくれるので、安心しています。実際に、お客様をご案内する際、どのような流れでご案内しているかお話しいただけますか?
新田 お遍路は覚えることがたくさんありますから、慣れない初日はお堂までご案内してお経のあげ方などの作法をお伝えしています。2日目からはお客様がお経をあげられている間に納経所のほうで、納経帳を書いていただく手配などをして、スムーズに回れるようにサポートしています。
徳野 初日は、船本さんが同行して納経所に行ってくれるので、ずっとお客様に付いてさしあげられます。ご案内する初日は、お客様もまだお遍路に慣れていませんし、初めての場合は不安も大きいと思うので、船本さんが現場にきてくれるのは、お客様にとっても私たちにとっても心強いですね。
船本 お遍路が初めてのお客様がほとんどですので、2日目、3日目もまだなかなか慣れませんよね。その場合も運転手さんが先達さんであり、お遍路のことをしっかりとお伝えしようということで常に学んでいるのは、お客様にとっては本当に安心だと思いますよ。
新田 やはり間違ったことをお伝えするわけにはいきませんから、常に勉強です。しかし、それで喜んでくださるのは、本当に嬉しいことです。
船本 タクシーを降りてからお寺まで、ずっとお客様に同行してご案内することも、お客様の安心につながっていますよね。
新田 普通の観光ですとそこまで気をつけることはないんでしょうが、お寺は急な階段や坂道も多く、歩きにくい箇所なども多いものです。足もとに注意しながら歩いていただけるように危険だと思うところはゆっくり歩いていただき、少しの段差であっても注意を促すなどしています。
徳野 お客様には「焦ってもいいですが、焦りすぎてはだめですよ」というようにしています。特にご高齢の方の場合、ほかの人に迷惑をかけたくないと、無理な速度で歩かれて、足もとまで行き届かないということもありますので。
船本 大型のバスなどで回るよりは少人数で回るので、自分のペースで回りやすいとはいえ、やはりグループで行動しますので、歩く速度ひとつとっても完璧に揃うことはありませんよね。そこを運転手さんが細かに配慮することで、安全に安心して回ってもらえればと思います。
徳野 長い時には10日以上にもなるツアーですから、やはりアクシデントはつきものです。もちろん、ケガをすることなどないように細心のケアをしていますが、なにかあればすぐに船本さんに連絡して、サポートするようにしています。
新田 山のなかの札所などは、どうしても自然のなかですから、蜂や蛇などの被害にあう危険もあります。細心の注意を払って、とにかく安全にということを心がけています。
徳野 といっても、あまり注意しすぎるとそういうことばかりに意識がいって、本来の目的であるお遍路に集中できなくなります。それでは申し訳ないですから、見ていないようにして常に大丈夫かどうか見ている、さりげなくご案内する、ということはしていますね。
船本 私たちは、そういう心遣いのできる新田さんや徳野さんのような先達ドライバーの方々に、案内役としてお願いしています。
それがお客様の信頼だと思っています。はじめていらっしゃるお客様が多いわけですから、お遍路について、作法についてきちんと知っているのはもちろんですが、安全面への配慮や、ちょっとした心遣いのできる運転手さんをでないと!
そこが疎かになったり、理解できない方だとお願いできないんですよ。
新田 それでも万が一のことがあるのも、ツアーです。なにかあった時には船本さんが対応してくれるということは、お客様も安心でしょうし、現場でお客様に接する私たちの安心感にもなっています。
船本 全部のツアーに同行することはできないですが、その分、ご案内役である運転手さんにも安心してお客様をおもてなししてもらえるようにするのが、私の役目ですから。
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