2020年の逆打ちに際して、2016年逆打ちの年におこなった
インタビュー記事を再掲載いたします。
船本 確かに美しい!四国を巡り終えて、家に帰ってひとつずつ台紙に貼りながら、遍路の旅の道中を思い起こすのも素敵ですね。
十河 はい、そうしていただけると、私たちも嬉しいです。四国遍路とひとことでいいますが、長い旅です。
そのなかで、お寺を巡ること以外の時間、地元の方とのふれあいや美味しい食事、そういったことも含めてすべてを体感していただき、そこからなにかを感じていただくのが、四国遍路だと私たちは考えております。記念散華についても、いつまでも心に残るような、なにかの証を授与させていただけないかという思いから生まれたのです。
船本 実際拝見すると、散華を目にするだけで、四国遍路を思い起こせ、心に残るであろうと、実感いたしますね。私たちのツアーにおいても、もちろんメインはお遍路で各お寺を回ることですが、それ以外の時間も楽しんでいただけるようにと配慮しております。
十河 それはとても大事なことですね。
十河 団体で来られる方も、歩きやマイカーでまわられる方ももちろんいらっしゃいますが、タクシー利用の方も増えてらっしゃいますね。
船本 はい、おかげさまでご相談も増えております。歩きやマイカーではなかなか難しい、しかしバスでは団体行動に合わせる必要があるので心配、というお客様が数多くいらっしゃるというのが実感です。
十河 まわられる方のご都合をある程度、事前に聞いてくださるのでしょう?安心ですよね。小回りが利くのもいいような気がします。
船本 乗り合いの場合はすべてのご要望にお応えすることはできませんが、それでも運転手が密接に関われる分、はじめてまわられる方でもご不安が少ないように感じます。
そういえば、ご相談に多いのが、初めてなのでどうやってまわればいいか、なにを揃えていいかわからないという声をよくお聞きします。副住職、どのようにアドバイスするのがよろしいと思われますか?
十河 そういった質問は私のところにも多いです。私は常々申し上げているんですが、皆さんにはあまりお遍路において「こうしなければならない」ということにとらわれすぎないでいただきたいんです。
もちろん、どのようにお参りするかという作法は大切ですが、それ以外の例えば装束などについては、あまり「これ全てやらないと」と思われなくてもいいように思うんです。お参りの作法についても、少しずつ習得すればよろしいかと。御社では、そのあたりもサポートしていただけるんですよね。
船本 はい、私どものツアーにおいては、運転手がお参りの方法なども含めてお寺に付き添うようになっていますので、不明な点は何でも聞いていただければ大丈夫です。
十河 それは心強いですね。どのようなお問い合わせがありますか?
船本 やはり今年は、逆打ちでまわりたいのだけれど、どうすれば?いうお客様がほとんどです。閏年の今年のうちにお遍路を回りたい、というお問い合わせは増えているように思います。
ところで、副住職。閏年の逆打ちには3倍のご利益があるといわれますが…。
十河 3倍のご利益があるというのは、皆さん、それだけ強い思いを持って、閏年に四国遍路をしているからということではないでしょうか。強い思いを持っているからこそ、「閏年に逆打ちを」と考えるともいえます。願いが強ければ強いほど、やはりその願いが届くものですから。
船本 船本 なるほど…。深いですね。
十河 いえいえ、それほど難しいことではありません。たとえば、順打ちにまわれば、徳島を冬に出発し、高知、愛媛と回って、香川に入るのは秋です。しかし、逆打ちであれば、冬。お遍路しながら、見る景色も、順打ちと逆打ちでは違って見えるんですね。
もう少し簡単にいいますと、順打ちでまわられ、その季節ごとに地元のものを召し上がっていたとします。そうすると、 香川に来られた際には秋の味覚しか堪能されていないのです。ですが、冬に香川を出発しますと、志度の牡蠣がとても美味しい、ということに気づいていただける。単純なようですが、それも、ご利益なのです。
船本 確かに見える景色、食べるもの、それによって、感じることは異なってきますね。
十河 そうでしょう?私たちは、お寺ですから、もちろん四国遍路をまわっていただく、四国遍路にぜひ来ていただきたいという際に、お寺のことを中心にお伝えしますが、四国遍路をきっかけに、四国を訪れてくれるということが何より嬉しいんです。
もちろん寺をまわることで、さまざまなことに気づき、重荷を下ろしていくお手伝いにはなりますが、旅の途中で、出会った人たちとのかかわりがなければ、わざわざ四国まで出向いても、ここまで心に残る旅にはならないと思うんです。
美しい景色に出会い、美味しいものに出会い、そして、そこの街の人に出会って、お接待を受け、温かい心にふれる。そういうことこそ、四国のよさ。四国遍路をきっかけにして、多くの人たちが今年、また四国を訪れてくれたら、私たちは何より幸せです。
船本 我々も、そのお手伝いができるようにサポートいたします。副住職、今日は良いお話を本当にありがとうございました。
十河 こちらこそ、ありがとうございました。